A.牛乳アレルギーは、症状が出るまでの時間も食べられるものもアレルギーの種類によって違うので、注意が必要です。
ご質問ありがとうございます。
牛乳アレルギーは乳幼児の食物アレルギーで三大原因の一つです。
注意するべき症状などを解説していきたいと思います。
牛乳アレルギーの主な症状

牛乳アレルギーの典型的な症状は、摂取してから数分~2時間以内に現れます。具体的には、
- じんましん
- 皮膚の赤み・かゆみ
- 口周りの腫れ
- 嘔吐(吐く)
- 下痢
- 咳やゼーゼー(喘鳴)
などさまざまで、子どもによって異なります。これらが1つだけ出る場合もあれば、同時に複数出ることもあります。
特に複数の臓器にまたがる症状(例えばじんましんと呼吸困難など)が急速に現れた場合はアナフィラキシーと呼ばれ、さらに血圧低下や意識もうろうなどショック状態になってしまうこともあります。
赤ちゃんが牛乳を口にして顔色が悪い、ぐったりしている、呼吸が辛そうといった様子が見られたら、ためらわず救急受診してください。
初めて牛乳を与える際は特に注意深く様子を見て、発疹程度の軽い症状でも念のため小児科医に相談すると安心です。
時間が経ってから症状が現れることも

牛乳によるアレルギー反応は、すぐ出るものだけではありません。
消化管アレルギー・食物蛋白誘発胃腸症(FPIES)と呼ばれるタイプの牛乳アレルギーもあります。FPIESでは、牛乳を摂取してから1~4時間ほど経ってから症状が出ます。
主な症状は激しい嘔吐で、繰り返し何度も吐いたり下痢をしたりします。
赤ちゃんがミルクを飲んでしばらくしてから顔色が青白くなり、明らかに元気がなくぐったりしている場合は、FPIESによるショック状態の可能性があります。このような時も速やかに医療機関を受診してください。
なお、FPIESのようなアレルギーでは皮膚に症状が出ない点が即時型と異なります。
血便が出るタイプ(食物蛋白誘発大腸炎)など牛乳アレルギーにはいくつか病態がありますが、いずれにせよ専門医の診断に従って対処しましょう。
牛乳アレルギーはなぜ起きる?

牛乳アレルギーが起こる原因としては、牛乳に含まれる乳たんぱく質がアレルギーの原因物質(アレルゲン)です。
牛乳たんぱく質は大きくカゼインと乳清(ホエイ)たんぱくに分類されます。カゼインは牛乳中のたんぱくの約80%を占める主要成分で、乳清たんぱくは残り20%ほどを占めます。
乳清たんぱくにはα-ラクトアルブミンやβ-ラクトグロブリンなどが含まれ、これらはいずれも牛乳アレルギーの原因となり得る物質です。
赤ちゃんにとっては初めて触れる異種のたんぱく質であるため、免疫が過敏に反応するとアレルギー症状を引き起こしてしまいます。
加熱した牛乳や加工した乳製品なら大丈夫?

食物アレルギーは、原因となるたんぱく質の性質によって症状の出やすさが変わることがあります。
牛乳の場合、含まれるたんぱく質ごとに熱による変化が少し異なります。
β-ラクトグロブリンの場合
例えば乳清たんぱくの一種であるβ-ラクトグロブリンは熱に弱く、80℃以上に加熱すると抗原性(アレルゲンとしての働き)が低下することが知られています。
そのため、牛乳アレルギーのお子さんでもβ-ラクトグロブリンやα-ラクトアルブミンに対する反応が主体の場合は、十分に加熱した牛乳やヨーグルト・チーズなどの加工品であれば症状が出ないこともあります。
カゼインの場合
一方、主要成分のカゼインは非常に熱に強く、100℃で加熱しても抗原性がほとんど変化しません。
そのため、カゼインに強く反応するお子さんの場合は、加熱済みの牛乳や焼き菓子に含まれる程度でもアレルギー症状が出てしまうことがあります。
どのたんぱく質にアレルギーがある場合でも医師の指導のもとで経口負荷試験を行い、安全に食べられる範囲を確認することが大切です。
粉ミルクやヨーグルトが平気なら牛乳アレルギーの心配はない?

乳児用の粉ミルク(調整乳)やフォローアップミルクなど普通のミルク製品を飲んでいる子は、基本的には牛乳たんぱくに対する耐性ができている場合が多いです。
また、離乳食が進み、ヨーグルトなどの乳製品をすでに食べている赤ちゃんであれば、牛乳アレルギーのリスクは低いと考えられます。
ヨーグルトは牛乳を発酵させて作りますが、含まれる乳たんぱく量は元の牛乳とほぼ同等かやや多い程度です(水分が減るぶん、100gあたりのたんぱく質は牛乳よりわずかに増えます)。したがってヨーグルトを問題なく食べられているなら、牛乳に含まれるたんぱくにもすでに慣れていると言えます。
もちろん絶対大丈夫と過信はできませんが、こうした乳製品をクリアしていれば牛乳そのものへのアレルギーリスクは低いでしょう。
■回答してくれたのはこの方■

濵野 翔 先生
杏林大学医学部卒。小児科医。アレルギーと呼吸器を専門とした小児科「ベスタこどもとアレルギーのクリニック」院長。
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