A. ナッツ類の早期摂取はアレルギー予防に役立つ可能性があります。ただし、誤嚥のリスクがあるため、形状や量に注意が必要です。
近年、日本ではくるみアレルギーの子どもが増加しており、2023年3月には食品表示基準が改正され、クルミが特定原材料(表示義務品目)に追加されました。これは、卵や牛乳、小麦と並び、くるみが食物アレルギーの原因として増えていることを受けた措置です。
これまで、日本ではピーナッツアレルギーがよく知られていましたが、くるみを含むナッツアレルギー全体の認知度はまだ十分とは言えません。
ナッツ類の早期摂取はアレルギー発症を防ぐ可能性があると考えられています。
ピーナッツを例に挙げると、イギリスのLEAP試験では、生後6か月頃からピーナッツを食べた子どもは、5歳までピーナッツを避けた場合と比較して、アレルギー発症リスクが約80%低下しました。この結果から、ピーナッツは生後5~6か月ごろから少量ずつ与え始めるのが良いとされています。
一方、くるみなど、ほかのナッツ類については、明確なガイドラインはないものの、ピーナッツと同様にナッツの早期摂取がアレルギー予防につながる可能性があります。ただし、ナッツ類は固い食品のため、そのままでは誤嚥(ごえん)のリスクがあり、形状や量に注意が必要です。
ピーナッツアレルギーのリスクを減らすには?

ピーナッツはロースト(焙煎)するとアレルゲン性が3倍以上に上昇することが研究で示されています。これは加熱によってピーナッツのたんぱく質の構造が変化し、免疫細胞が反応しやすくなるためです。
そのため、焙煎ピーナッツを使用した食品(ローストピーナッツ、ピーナッツバター、ピーナッツパウダーなど)は、生のピーナッツよりもアレルギーを引き起こしやすいとされています。
ピーナッツアレルギーのリスクを減らすためには、最初に与える際は生のピーナッツ由来の製品や、軽く茹でたピーナッツパウダーを使う方が安全と考えられます。ただし、生のピーナッツは誤嚥のリスクがあるため、粉末やペースト状にすることが重要です。
一方で、ピーナッツオイルにはアレルゲンとなるたんぱく質がほとんど含まれないため、アレルギーを起こしにくいとされています。したがって、風味付けとして使用する分には比較的安全ですが、アレルギー予防のために積極的に取り入れる必要はありません。
ナッツの交差反応に注意

ナッツ類には、似た種類同士でアレルギーを起こす「交差反応」があるため、特定のナッツにアレルギーがある場合は、近縁のナッツにも注意しましょう。
くるみにアレルギーがある場合、ペカンナッツにも反応しやすく、同様にカシューナッツアレルギーがある場合はピスタチオにも注意が必要です。
特にカシューナッツやピスタチオは、アナフィラキシーのリスクが高いとされており、一度に大量に食べるのは避けた方がよいでしょう。
初めてナッツを与えるときのポイント

ナッツ類は固く、窒息のリスクがあるため、パウダーやペースト状にして離乳食に混ぜる形で少量(耳かき1さじ程度)から始めます。一度に多く与えず、3~5日間は同じ食品を続けて与えて様子を見るのが理想的です。
また、ピーナッツやくるみを初めて試す際は、小児科の診察時間内(できれば平日午前)に与えるようにしましょう。アレルギー症状が出た際にすぐに対応できるため安心です。
アレルギー症状をチェック

ナッツ類を食べた後に以下の症状が現れた場合は、食物アレルギーの可能性があります。
軽度の症状
口の周りの赤み、じんましん、軽い嘔吐
中等度の症状
顔のむくみ、繰り返す嘔吐、強いかゆみ
重度の症状(アナフィラキシーの可能性)
呼吸が苦しそう(ゼーゼーする、息が速い)、顔色が青白い、ぐったりしている
特に呼吸困難や意識がもうろうとする症状が出た場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。軽度の症状でも心配な場合は、小児科で医師に相談しましょう。
■回答してくれたのはこの方■

濵野 翔 先生
杏林大学医学部卒。小児科医。アレルギーと呼吸器を専門とした小児科「ベスタこどもとアレルギーのクリニック」院長。
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