Q.バナナをあげたら口の周りが赤い!口の周りが赤いのはアレルギー?病院受診の目安は?

今回のご相談
離乳食を始めたばかりの生後7か月の赤ちゃんがいます。もともと肌が弱く、先日バナナを食べた際に口の周りが赤くなり、病院を受診したところ「かぶれ」と診断されました。今後もアレルギーとの見分けがつかず不安です。病院を受診する判断の目安はありますか?

A. 赤ちゃんの口周りの赤みは多くがかぶれによるものですが、全身に症状が出る場合や繰り返す場合は受診を検討しましょう。

ご質問ありがとうございます。

離乳食を食べた後に赤ちゃんの口の周りが赤くなっているのを見つけると驚いてしまいますよね。しかしご安心ください。口の周りだけに赤みが出ている場合、ほとんどは食べ物やよだれが皮膚に触れたことによる刺激「かぶれ」であり、いわゆる食物アレルギーとは異なります

専門的には接触性皮膚炎(あるいは接触じんましん)と呼ばれるもので、刺激の強い食べ物が肌に付いたり、皮膚がデリケートな状態のところに触れたりすることで一時的に赤い発疹が出てしまうものです。

例えば、酸味の強いトマトやいちご、みかんなどを食べた後に口の周りが赤くなることがありますが、これらは全身的なアレルギー反応を起こすことは通常なく、局所的な刺激によるものと考えられています。

一方、食物アレルギーの場合は免疫反応が関与し、食べ物を体内に取り込んだ後に全身に症状が出る可能性があります。

アレルギーによる発疹は口周りだけでなく体の他の部分(手足や背中など)にも蕁麻疹や赤みが現れたり、皮膚症状以外にも嘔吐・下痢などの消化器症状や咳・ゼーゼーといった呼吸器症状、さらには顔色が悪くなったりぐったりするなどの全身症状を伴うことがあります。

つまり症状が口の周りだけに留まるか、それ以外にも出ているかが大きな違いです。

アレルギーと反応を見分けるポイント

具体的にアレルギー反応とかぶれを見分けるポイントをまとめました。

1. 症状が出る範囲

かぶれの場合、赤みや発疹は口の周り、顎、頬など食べ物やよだれが付いた部分に限られます。一方、アレルギーの場合は口周り以外の手足・体にも蕁麻疹や発疹が広がることが多いです。

2. その他の症状

かぶれでは皮膚の赤み以外の症状(吐く、下痢をする、咳が出るなど)は通常みられません。赤み部分を少しかゆがる程度で、赤ちゃんの機嫌もおおむね良好です。

アレルギー反応では嘔吐、下痢、咳、ゼーゼー(喘鳴)、顔や唇の腫れなど何らかのほかの症状を伴うことがあります。赤ちゃんが急に泣いて不機嫌になったり、元気がなくなる様子が見られた場合も要注意です。

3. 症状が出るタイミング

かぶれによる赤みは食事中や直後など、食べ物が皮膚に触れてすぐに現れます。アレルギーによる発疹も多くは食後数分~30分以内に出ますが、食べ終わった後しばらく経ってから(30分以上してから)全身に広がってくるケースもあります。

また毎回同じ食品を食べると必ず出る場合はアレルギーを疑いやすく、逆にかぶれはそのときの肌の状態によって出たり出なかったりすることもあります。

4. 赤みの出方

食物アレルギーによる蕁麻疹は比較的左右対称(体の右左に均等)に出ることが多いのが特徴です。一方、食べこぼしや手で擦ったことによるかぶれは、不規則で左右対称ではない形に現れる傾向があります。

例えば、赤ちゃんが食べ物のついた手でほっぺたの一部を触ると、その触った跡だけ赤くなる、といった場合は接触によるかぶれと考えられます。

離乳食を与える際の注意点:食材の選び方と進め方

ここからは、離乳食を与えるときの注意点についていくつかお話します。

口周りが赤くなりやすい赤ちゃんには、離乳食の食材選びや進め方にも少し工夫が必要です。だからといって、必要以上に食材を制限しすぎる必要はありません。

ポイントは「赤みが出にくいよう工夫しつつ、栄養バランスよくいろいろな食品に慣れさせていく」ことです。

1. 刺激の強い食材は様子を見ながら与える

酸味の強い野菜や果物(トマト、いちご、みかん、パイナップルなど)や、ケチャップ・ソースなど大人用の味付けが濃いものは、皮膚に付くとかぶれを起こしやすい食材です。これらを与えてはいけないわけではありませんが、初めて与えるときは少量から始め、できるだけ口の周りに付かないよう工夫すると良いでしょう。

例えばトマトは湯むきして種を除き、すりつぶしてスプーンでそっと口の中に入れてあげるなど、皮膚への付着を最小限にする工夫をします。それでも赤みが出てしまった場合は、一旦その食材はお休みして、皮膚の調子が良いときに改めて挑戦してみましょう。

2. 一度に複数の新しい食品を始めない

どの赤ちゃんにも言えることですが、新しい食材を始めるときは1種類ずつにしましょう。一度にいくつも新しいものを与えると、もし何か反応(発疹や下痢など)が出た場合に原因の特定が難しくなります。

とくに口周りが赤くなりやすいお子さんでは、どの食材で赤くなったのか見極めるためにも1日1種類ずつ、新しい食材は数日あけてから順番に増やしていく方法がおすすめです。例えば月曜日ににんじんを始めたら、火〜水曜はほかに新しいものは増やさず様子を見る、といった具合です。こうすることで赤みの原因を切り分けやすくなります。

3. アレルギーの可能性が低いと分かった食品は続けてOK

一度食べてみて特に問題のなかった食材は、その後も定期的に食べさせて大丈夫です。赤みが出なかった食品まで避けてしまう必要はありません。むしろ食べられるものはどんどん食べて慣らしていくことで、赤ちゃんの栄養の幅も広がりますし、食べ物に対する耐性(経口免疫寛容)もつきやすくなります。

例えば「卵ボーロを食べたら口が赤くならなかった」「豆腐は平気だった」など、一度クリアしたものは引き続き与えて問題ありません。ただし体調の悪い日や肌の調子が悪い日は無理せず、調子の良い日に進めるようにしましょう。

離乳食を与える際の注意点:食事前後のスキンケアと工夫

口の周りが赤くなりやすい赤ちゃんには、食事の前後におけるスキンケアも重要なポイントです。赤ちゃんの皮膚は大人より薄くデリケートですので、ちょっとした工夫で刺激をぐっと減らすことができます。以下に家庭でできる具体的な対策をまとめました。

1. 食事前に肌を保護しましょう

食べこぼしによるかぶれを予防する簡単で効果的な方法は、離乳食の前に口の周りにワセリン(白色ワセリン)を薄く塗っておくことです。ワセリンが皮膚の上にバリア膜を作り、食べ物の刺激からお肌を守ってくれます。

実際、口周りに湿疹がある状態で離乳食を与えると食物が触れて赤くなりやすいのですが、その際事前にワセリンなどの保護剤を塗って食べ物が直接肌に付かないようにすることで赤みが出にくくなります。

ワセリンは薬局で手に入り、赤ちゃんが舐めてしまっても問題ない安全性の高い保湿剤です。食事用エプロンやスタイを付けるタイミングで、さっと口の周りにひと塗りしてみましょう。

2. 食事の後はすぐに優しく汚れを拭き取る

赤ちゃんの口の周りに食べ物が付いたままになっていると、そこから肌が刺激を受けてかぶれてしまうことがあります。食べ終わったらできるだけ早めに口の周りをきれいに拭き取りましょう。

このときのポイントは、決してゴシゴシ擦らないこと。ぬるま湯で湿らせた柔らかいガーゼやタオルで、ポンポンと押さえるように拭き取ると刺激を抑えられます。市販のおしりふきやウェットティッシュを使う場合も、できればノンアルコール・無香料のものを選びましょう。

乾いたティッシュでこすると肌に繊維が引っかかり刺激になりますので避けてください。汚れがひどい時はぬるま湯で洗い流してあげてもOKです。最後に水分をそっと押さえて拭き取り、その後保湿剤(ベビーローションやワセリン)で口周りを保湿ケアしてあげるとなお良いでしょう。

肌を清潔に保ちつつ潤いを与えることで、かぶれの早い改善と予防につながります。

アレルギーかな?と思ったときの対処法と受診の目安

食事中や食後に赤ちゃんの様子が普段と違うと感じたら、落ち着いて以下の対処を行いましょう。

まず口の中に食べ物が残っている場合は無理に飲み込ませず、可能なら口から出させます。

赤み程度でほかに症状がない場合は、先ほど述べたように口周りを優しくきれいに拭き取り、一旦様子を見てください。機嫌が良く、赤みも30分~1時間ほどで引いてくるようなら心配いりません。次回からの食事で同じことが起こらないよう、前述の予防策(ワセリンを塗る、小量ずつ与えるなど)を試してみましょう。

一方で、次のような場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。

毎回同じ食品で口周りの赤みが繰り返し起こる場合

「この食品を食べると必ず赤くなる」などのケースの場合、医師に相談し、必要に応じてアレルギーの検査や食物負荷試験で原因を確認してもらいましょう。

口の周り以外にも発疹や蕁麻疹が出現した場合

口の周り以外にも発疹や蕁麻疹が出現した場合や、嘔吐・下痢、激しい咳、声がれなどほかの症状を伴う場合は、食物アレルギーの可能性が高いので、速やかに小児科を受診してください。とくに呼吸がゼーゼーしたり顔色が悪い、ぐったりしているなどの症状がある場合は迷わず救急受診しましょう。

赤みや湿疹が数時間たっても引かずに悪化していく場合

かぶれであれば時間とともに治まることが多いので、治らず長引く場合は一度診察を受けたほうが安心です。

家庭でのケアで改善しない口周りの湿疹がある場合

食事以前に皮膚の状態を整える必要があります。皮膚科や小児科で適切な外用薬(塗り薬)を処方してもらいましょう。

まずは赤ちゃんの様子を落ち着いて観察して、不安なことがあれば早めに専門家に相談してみてくださいね。


■回答してくれたのはこの方■

濵野 翔 はまの しょう 先生

杏林大学医学部卒。小児科医。アレルギーと呼吸器を専門とした小児科「ベスタこどもとアレルギーのクリニック」院長。


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